●小規模宅地等についての課税価格の計算! |
■小規模宅地等についての課税価格の計算の特例
1.特例の趣旨と概要
相続税は、財産の取得にかかる税であることから、土地などの不動産だけを相続すると、その不動産を売却しないと納税資金が足りないというケースもあります。
ところが、その土地で事業を行っていたり、相続人が相続後も住み続ける土地は、生活の基盤になる財産であり、相続税のために処分すると生活の維持ができなくなってしまいます。
そこで、一定の事業用の土地や居住用の土地については、そのうち「限度面積要件」を満たす部分について、通常の評価額から一定割合を減額して相続税の課税額とすることにしている。
これを「小規模宅地等について相続税の課税価格の計算の特例」といいます。
2.小規模宅地等の意義
個人が相続や遺贈により取得した財産のうちに、その相続の開始の直前において、被相続人や被相続人と生計を一にする親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等(宅地又は借地権など宅地の上に存する権利)で建物又は構築物の敷地の用に供されていたものがある場合において、特例対象宅地等に該当するもののうち、その個人が選択したもので、限度面積要件を満たすものを小規模宅地等という。
なお、この特例は、相続税の申告期限までに相続人等の間で分割されていない宅地等には適用されない。
相続財産が未分割の場合の課税価格の計算方法は、この特例による減額前の宅地等の評価額を基に課税価格を計算することになります。
ただし、相続税の申告期限において未分割でも、その宅地等から申告期限から3年以内等に分割されれば、この特例を受けることができます。
3.特例の適用対象面積(限度面積要件)
この特例の適用により減額される宅地等の面積(限度面積要件)は、特例の適用対象となる宅地等の種類に応じて次のように定められている。
@この特例の適用を受けるものとして選択した宅地等(選択特例対象宅地等)のすべてが「特定事業用等宅地等」の場合・・・400uまで
A選択特例対象宅地等のすべてが「特定居住用宅地等」の場合・・・240u
B選択特例対象宅地等のすべてが「貸付事業用宅地等」の場合・・・200u
C選択特例対象宅地等が「特定事業用等宅地等」、「特定居住用宅地等」及び「貸付事業用宅地等」の場合・・・次の算式により計算される面積まで
特定事業用等宅地等の合計面積+(特定居住用宅地等の合計面積×5/3)+(貸付事業用宅地等の合計面積×2)≦400u
(注)1 上記の「特定事業用等宅地等」とは、下記で説明する「特定事業用宅地等」及び「特定同族会社事業用宅地等」をいいます。
2 上記のCの算式は、特定事業用等宅地等、特定居住用宅地等及び貸付事業用宅地等のうち、2以上の種類のものを選択特例対象宅地等とした場合のそれぞれの宅地等の限度面積の調整計算であり、この算式は次のように書き直すことができます。
イ 選択特例対象宅地等が特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等で、特定事業用等宅地等を優先して選択した場合の特定居住用宅地等の適用面積
特定居住用宅地等の適用面積=240u−(選択特例対象宅地等とした特定事業用等宅地等の面積×3/5)
ロ 選択特例対象宅地等が特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等で、特定居住用宅地等を優先して選択した場合の特定事業用等宅地等の適用面積
特定事業用等宅地等の適用面積=400u−(選択特例対象宅地等とした特定居住用宅地等×5/3)
ハ 選択特例対象宅地等が特定事業用等宅地等と貸付事業用宅地等で、貸付事業用宅地等を優先して選択した場合の貸付事業用宅地等の適用面積
貸付事業用宅地等の適用面積=200u−(選択特例対象宅地等とした特定事業用等宅地等の面積×1/2)
ニ 選択特例対象宅地等が特定事業用等宅地等と貸付事業用宅地等で、貸付事業用宅地等を優先して選択した場合の特定事業用等宅地等の適用面積
特定事業用等宅地等の適用面積=400u−(選択特例対象宅地等とした貸付事業用宅地等の面積×2)
ホ 選択特例対象宅地等が特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等で、特定居住用宅地等を優先して選択した場合の貸付事業用宅地等の適用面積
貸付事業用宅地等の適用面積=200u−(選択特例対象宅地等とした特定居住用宅地等の面積×2.5/3)
ヘ 選択特例対象宅地等が特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等で、貸付事業用宅地等を優先して選択した場合の特定居住用宅地等の適用面積
特定居住用宅地等の適用面積=240u−(選択特例対象宅地等とした貸付事業用宅地等の面積×3/2.5)
ト 選択特例対象宅地等が特定事業用等宅地等、特定居住用宅地等及び貸付事業用宅地等で、特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等を優先して選択した場合の貸付事業用宅地等の適用面積
貸付事業用宅地等の適用面積=200u−{(選択特例対象宅地等とした特定事業用等宅地等の面積×1/2)+(選択特例対象宅地等とした特定居住用宅地等の面積×2.5/3)}
チ 選択特例対象宅地等が特定事業用等宅地等、特定居住用宅地等及び貸付事業用宅地等で、特定事業用等宅地等と貸付事業用宅地等を優先して選択した場合の特定居住用宅地等の適用面積
特定居住用宅地等の適用面積=240u−{(選択特例対象宅地等とした特定事業用等宅地等の面積×3/5)+(選択特例対象宅地等とした貸付事業用宅地等の面積×3/2.5)}
リ 選択特例対象宅地等が特定事業用等宅地等、特定居住用宅地等及び貸付事業用宅地等で、特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等を優先して選択した場合の特定事業用等宅地等の適用面積
特定事業用等宅地等の適用面積=400u−{(選択特例対象宅地等とした特定居住用宅地等の面積×5/3)+(選択特例対象宅地等とした貸付事業用宅地等の面積×2)}
4 減額の割合
この特例が適用される場合の相続税の課税価格に算入される金額は、小規模宅地等の価額(評価額)に次の割合を乗じた金額である。
@特定事業用宅地等、特定居住用宅地等及び特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等・・・100分の20
A貸付事業用宅地等である小規模宅地等・・・100分の50
つまり、@に該当する小規模宅地等は通常の評価額から80%減額、また、Aの場合は50%減額されるということです。
※適用対象面積と減額割合をまとめると、次のようになります。
小規模宅地等の種類 |
適用面積 |
減額割合 |
特定事業用等宅地等 |
特定事業用宅地等 |
400u |
80% |
特定同族会社事業用宅地等 |
400u |
80% |
特定居住用宅地等 |
240u |
80% |
貸付事業用宅地等 |
200u |
50% |
(注)特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積の拡大
現行: 上限240uから 改定案: 上限330uに改定。(平成27年1月1日以降適用)
(注)特定事業用と特定居住用の宅地を併用する場合の限度面積
現行: 事業用:400u 居住用:240u 最大400u
改定案:事業用:400u 居住用:330u 最大730u(平成27年1月1日以降適用)
なお、上記の各宅地等を被相続人の複数の親族によって共同(共有)で取得した場合には、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、特定居住用宅地等又は貸付事業用宅地等の要件を満たす者の取得した持分の割合に応ずる部分に適用されます。
5.特例対象宅地等の意義
この特例による減額割合は、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等又は特定居住用宅地等について80%、貸付事業用宅地等については50%であるが、それぞれの適用要件を満たす者が取得した場合に限り、特例が適用されます。
(1)特定事業用宅地等
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等で、次の要件のいずれかを満たす被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいう。
@その親族が相続開始時から相続税の申告期限までの間に、その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を引き継ぎ、申告期限までその宅地等を所有し、かつ、その事業を営んでいること。
Aその親族がその被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を自己の事業の用に供していること。
このうち@は、被相続人の事業用宅地等を取得した相続人等が、その相続後に被相続人の事業を引き継いだというケースであり、文字どおり相続による事業継承を想定したものであります。
これに対し、Aにおける「自己」とは、宅地等を取得した相続人等が自らの事業を行っていたケースが想定されています。
なお、特定事業用宅地等における「事業」には、いわゆる不動産貸付業は含まれない。したがって、貸宅地や貸家建付け地については、貸付事業用宅地等に該当する場合に限り、減額の割合が50%となる。
(2)特定居住用宅地等
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、被相続人の配偶者又は次の要件のいずれかを満たす被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます。
@その親族が相続開始の直前において、その宅地等の上に存する被相続人の居住用家屋に居住していた者であって、相続開始時から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その家屋に居住していること。
Aその親族が相続開始前3年以内にその者又はその配偶者の所有する家屋に居住したことがない者であり、かつ、相続開始時から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を所有していること(被相続人の配偶者又は同居の法定相続人がいない場合に限る。)
Bその親族が被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の居住の用に供していること。
要するに、配偶者が居住用宅地等を相続した場合は、無条件で80%減額が認められるが、子など他の相続人が取得した場合は、@からBのいずれかに該当しないと80%減額はできないということです。
なお、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等が2以上ある場合には、次の宅地等が特定居住用宅地等となる。
@被相続人の居住用宅地等が2以上ある場合・・・その被相続人が主として居住の用に供していた一の宅地等
A被相続人と生計を一にしていた親族の居住用宅地等が2以上ある場合・・・その親族が主として居住の用に供していた一の宅地等
B被相続人及びその被相続人と生計を一にしていた親族の居住用宅地等が2以上ある場合・・・
次の区分に応じ、それぞれに定める宅地等
イ その被相続人が主として居住の用に供していた一の宅地等とその親族が主として居住の用に供していた一の宅地等とが同一である場合・・・その一の宅地等
ロ イ以外の場合・・・その被相続人が主として居住の用に供していた一の宅地等及びその親族が主として居住の用に供していた一の宅地等
要するに、特例の対象となる特定居住用宅地等は、1か所に限られるということです。
(3)特定同族会社事業用宅地等
相続開始の直前において被相続人及びその被相続人の同族関係者が有する株式(出資を含む)の総数がその法人の発行済株式総数(出資金額)の10分の5を超える法人の事業の用に供されていた宅地等で、その宅地等を相続又は遺贈により取得した被相続人の親族(相続税の申告期限においてその法人の役員である者に限られる)が相続開始時から申告期限まで引き続き所有し、かつ、申告期限まで引き続きその法人の事業の用に供されているものをいう。
なお、この場合の法人の「事業」には不動産貸付業は含まれない。したがって、法人の事業が不動産貸付業である場合には、80%減額は適用されない。
(4)貸付事業用宅地等
被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等で、次の要件のいずれかを満たす被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいう。
@その親族が相続開始時から相続税の申告期限までの間に、その宅地等に係る被相続人の貸付事業を引き継ぎ、その申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その貸付事業の用に供していること。
Aその被相続人の親族が被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を自己の貸付事業の用に供されていること。
これらは、特定事業用宅地等の「事業」を「貸付事業」とした場合の要件と同じです。要するに@は、被相続人の不動産貸付に係る宅地等を取得した相続人等が、相続後にその貸付事業を承継したケースであり、Aは、宅地等を取得した相続人等が、被相続人の所有する宅地等で、相続開始前から貸付事業を行っており、相続後もその貸付事業を継続するということである。
なお、この規定における「貸付事業」とは、「不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場及び事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの」とされています。
したがって、いわゆる貸家建付地や貸宅地も貸付事業用宅地等として特例の対象となるが、特定事業用宅地等と異なり、80減額ではなく、50減額となることに注意を要します。
6.特例を受けるための申告手続き
小規模宅地等についての課税価格の計算の特例を受けるためには、原則として相続税の申告書に、この規定の適用を受けようとする旨を記載し、課税価格算入額に関する明細書その他一定の書類を添付することとされています。
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