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■遺言事項の法的効力
遺言によって法的な効力を与えられるのは、財産の処分に関する(遺贈など)相続に関する事項(相続指定分など)及び身分に関する事項(遺言による認知など)の3つに大別することができます。遺言でできる事項を列挙すると、次のとおりですが、これらのうち、必要な事項だけを遺言書に記載すれば足りることはいうまでもありません。
@認知
A後見人の指定、後見監督人の指定
B遺贈、寄附行為
C遺贈の減殺方法の指定
D相続人の廃除、廃除の取消し
E相続分の指定、指定の委託
F特別受益者の持戻しの免除
G遺産分割方法の指定、指定の委託
H遺産分割の禁止
I共同相続人間の担保責任の指定
J遺言執行者の指定、指定の委託
K信託の設定
なお、これら以外の個人の感情的な事柄として、たとえば「相続財産は円満に分配すること」とか、「相続人は互いに助け合っていくこと」あるいは「葬儀は簡素に行うこと」といったことを遺言書に書くことはかまいません。ただし、法的な効力は一切ありません。
■遺言(遺贈)と相続税
遺言による財産分与を「遺贈」といい、、遺贈される者を「受贈者」といいますが、受贈者の取得財産について相続税が課税されることはいうまでもありません。遺言事項は、相続税に関わることが少ないのですが、とくに「遺産分割方法の指定」と「遺産分割の禁止」じこうは相続税に大きな影響が生じます。
相続税は、遺産分割の方法によって納付税額が異なることがあり、また、財産の種類によっては、その財産の取得者が誰であるかによって相続人全体の納税額に影響を及ぼす制度があります。前者は「配偶者に対する相続税額の軽減」であり、後者は「小規模宅地等の特例」です。
被相続人の配偶者について、相続財産価額(課税価格の合計額)のうち法定相続分相当額又は1億6,000万円のいずれか多い金額に対応する相続税額は税額控除となります。このため遺言で配偶者の取得財産を指定し、その指定に従って分割をした場合に配偶者の取得財産価額がこれらの金額を下回ると、結果的に税額控除が十分に活かされないことになります。
また、被相続人の事業用宅地等や居住用宅地等については、その取得者が一定の者である場合には、「小規模宅地等の減額特例」によりその相続税評価額から80%の減額が適用できることとされています。これらの宅地等の取得者を指定した場合、その取得者が80%減額の適用対象者でないとすれば、特例を活かした場合に比べ、納税額が過大なものになります。
したがって、遺産分割方法を遺言で指定する場合はこのような税務問題に十分な配慮をする必要があります。
また、相続税の申告は、相続人が相続の開始を知った日の翌日から10か月以内とされていますが、申告書の提出時に相続財産が分割されていない場合は、配偶者の税額軽減既定や小規模宅地等の特例のいずれも適用できないこととされています。
このため、遺言において遺産分割の禁止事項がある、未分割での申告となり、納税上の不利が生じるおそれがあります。少なくとも遺言における遺産分割の禁止は、税務的にみて有利に作用することはありません。
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